作れちゃう

3/3 わくわくアトリエ 江戸アニメ「写し絵」ワークショップ

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ワークショップの記録です。1968展の出品作家で映像作家の中嶋興さんをお招きして、江戸アニメ「写し絵」ワークショップを開催しました。江戸時代に大衆に娯楽として親しまれた「写し絵」は、現代のアニメのルーツとされています。今回のワークショップでは、写し絵を通じて、動画の仕組みや歴史を学び、さらにフィルムに絵を直接描いて、動画を作る実験をしました。静岡県美では初めてのアニメに関連したワークショップになりましたが、子どもから大人まで、幅広い年代の方々が参加してくださいました。アニメの歴史に触れて、制作に挑戦した充実の1日の様子をご覧ください。

講師の中嶋さんは、1960年代よりフィルムに直接描いた絵を、16㎜映写機で動画として上映する「カキメーション」を発案し、このカキメーションの手法により《精造機》1964年(4分、16㎜フィルム、絵具、音楽)をはじめとするアニメーション作品を多数発表してきました。同作品を含む作品は、ニューヨーク近代美術館(MOMA)にも収蔵されています。

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まずは動画の歴史についてのお話の後、これまでに実施された「写し絵」の映像を見て、実際にその場で投影しました。こちらの中嶋さんがお持ちの光っている箱が、「風呂」という投影機です。江戸時代に西洋から投影機が輸入され、日本は独自にこの木製の投影機を作りました。持ち手が熱くなることや、形が風呂桶に似ていることから「風呂」と呼ばれています。

伝統的な写し絵の上映では、語り手と楽器の音に合わせて絵が動きますが、その仕組みは鑑賞者には分かりません。今では仕掛が何となく想像できますが、電気の無かった時代に、暗がりに浮かび上がる絵、しかも自在に動くということが、当時の人々にとってどれほどの驚きだったのでしょうか。 当時の人々は、私たちが映画を見るように楽しんでいたようです。

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投影機のフィルムの役割をするものを「種板(たねいた)」と呼びます。この種板を風呂にはめることで、絵が投影されます。江戸時代ではガラスを使用したそうですが、今回は透明プラスチックに絵を描きました。この透明な板をスライドさせて、絵を動かします。5cmの小さな絵が、自身と同じくらい大きく投影されます。

仕組みが分かったところで、種板づくりに入ります。まずは下絵を描きながらモチーフのどの部分を動かすのか考えます。

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シンプルに鳥が飛ぶ様子を表現したい場合でも、背景を動かすのか、鳥自体を動かすのか、それとも両方動かすのか…さまざまなやり方があります。コマ数自体は2コマと短いのですが、意外と難しいものです。

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下絵が完成したら、油性のマジックを使って描いていきます。

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完成した人から一人ずつ投影に挑戦です。描いたのは小さな絵ですが、自分より大きく投影されます。

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動物、人、キャラクターなど、さまざまな主人公が登場しました。2コマという短い作品ですが、それぞれ工夫が凝らされています。思いがけない場面の変化に、見ていると前後の物語を想像したくなります。なかには3コマで作った参加者の方もいました。

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実際に自分で投影してみると分かるのですが、種板を動かすことが意外と難しいのです。伝統的な上映の仕方ですと、風呂を持って、種板を動かし、さらに自分も風呂を持って動くので、投影する役は演者としてとても忙しい動きをされていることが分かります。

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午後の部は、「カキメーション」に挑戦です。午後はさらにコマを増やして、絵を動かすことに挑戦しました。今回は、フィルムに直接絵を描きます。約30mのフィルムを1人当たり1.5m程度ずつ描きました。フィルムの種類は、16mmという、家庭で使うカメラに入れるフィルムよりもずっと細いフィルムです。

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30mを広げて皆で一気に描きます。保護者の方も一緒にカキメーションに挑戦です。具体的なモチーフを動かしても良いですが、抽象的な形の動きも面白いので、数色の色を使って、連続的に描いていきます。

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フィルムの穴と穴の間が1コマで、12コマで1秒になります。形の動きを想像しながら実験的に描き進めます。パラパラ漫画のような仕組みですね。

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さらに、「ヒッカキメーション」にも挑戦しました。使うフィルムは事前に乳剤が塗布されており、不透明です。この乳剤を引っかいて剥がして、剥がしたところにマジックでインクをつけます。一体どのように映るのでしょうか?まずは、ニードルやサンドペーパーなどの道具を使って、フィルムを引っかきます。強く引っかくとフィルムが切れてしまうので、加減して様子をみながら進めます。

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切符の穴をあける機械や、パンチで穴を開けてみた箇所もありました。銅版画制作で使っている金属製のやすり、消しゴム判子など、あらゆるものを使って線を作り、油性マジックで線に色を付けます。

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とても長いフィルムでしたが、お友達や大人と協力しつつ、描き上げました。どのように出来ているのか想像しつつ、わくわくしながら描き進められるのがアナログの醍醐味の一つです。

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さっそく上映会です。こちらの16mmの映写機を使って上映します。スイッチを入れると、ランプが点いて、フィルムが回り、フィルムを巻き取る、シュルシュル、カタカタという音がします。

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さて、どのように仕上がったのでしょうか?ここではほんの一部をキャプチャーして掲載します。一コマずつ描かれたものから、色と線を使った実験的なものまで、各々の表現が1本のフィルムに凝縮され、見応えのある映像ができました。こちらはカキメーションで作った映像です。

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こちらは、ヒッカキメーションです。引っかいたところから映写機の光がそのまま通り、白く光っています。キラキラと流れる光の美しさが印象的でした。

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それぞれの方法で、約6分間もの映像を作ることができました。今や子どもたちにとってスマートフォンや、動画共有サイトは身近な存在です。今回は、絵を描いて、直接投影するというアナログな手法に挑戦しましたが、出来上がった作品を見ると皆さんの描いた線がとても生き生きしていて、手描きの面白さというものを改めて感じました。今回は短い映像を作りましたが、作り手の経験をすることで、「絵が動くこと」について体感的に知ることができたのではないでしょうか。ご家庭でもまた挑戦してみてくださいね。