作れちゃう

5/28-29 実技講座「日本画・金箔貼り」

先週末に行われた、実技講座「日本画・金箔貼り」の様子をご紹介いたします。
この講座は、数年にわたり継続している人気講座で、今年は、開館30周年記念展「東西の絶景」にちなみ、金箔貼りした色紙に吉祥の図像を描き、華々しい作品を制作していただきました。

講師には、日本画家の鈴木強氏をお招きしました。鈴木さんは、金箔を装飾的に用いた琳派風の作品を制作されています。画中には、笑った顔の愛らしい動物が描かれており、鶴や象、コワモテの龍までも微笑を称え、見る人をなんとも幸せな気持ちに誘います。こういったモチーフは、今回の講座のお題である「吉祥画」に通じる点も多く、鈴木さんのアドバイスのひとつひとつが、とても勉強になりました。suzuki                            鈴木強≪笑うツルとゾウ≫

【1日目/金箔貼りと切箔の体験】
先ずは、支持体となる色紙の全面に金箔を貼り付けます。金箔は、柔らかい金の性質を利用し、わずか0.001㎜まで薄く延ばされています。このため、手で触れることは元より、吐息がかかっただけでも、くしゃくしゃになってしまいます。それを防ぐために、ロウを引いた紙に金箔を移し、扱いやすい状態にします。この工程を「箔あかし」と呼びます。①
金箔貼りの最初の山場、「箔あかし」の作業は、これまでに何百回と金箔を貼ってきた鈴木さんであっても、毎回、緊張する一瞬だそうです。箔の上にロウ引き紙を乗せ、竹箸で上から優しく撫でつけ、箔をロウ引き紙に移します。
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金箔がロウ引き紙に移りました。これが「箔をあかした」状態です。
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お一人ずつ挑戦していただきました。上手く出来るかどきどきです…。
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続いて、あかした金箔を色紙に貼り付けます。金箔を貼り付ける際、日本では、伝統的に賿(にかわ)を用いてきました。賿は、鹿や牛などの動物から採れるコラーゲンが主成分で、箔を貼り付ける以外にも、絵の具に混ぜる等、接着や定着の目的で使われてきました。
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金箔を貼り付けたい部分に賿を引き…ひと呼吸。
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あかした箔をそっと乗せます。
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ロウ引き紙を持ち上げると、金箔は色紙に貼り付きます。
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今回の金箔の大きさは約11㎝角ですので、無駄なく色紙を埋め尽くすように貼り付けていきます。
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箔を綺麗に貼り付けるには経験を積む必要があり、はじめはどうしても、穴が開いたり、亀裂が入ったりしてしまうため、余分に出た箔を使い、後から綺麗に修正します。
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午後からは趣向を変え、別の色紙に「切箔」を施しました。⑬
本来「切箔」は、下の写真のように、箔を鹿革で出来た箔切台の上に乗せ、竹刀で切っていくのですが…
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講座では鈴木さんの編み出したオリジナル技法を用い、なんと、はさみでチョキチョキ切っちゃいました。この大胆な試みには、純金箔よりリーズナブルな洋箔を用いました…。
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洋箔を「あい紙」に挟み込み、はさみにベビーパウダーをまぶして切っていきます。はさみを使いますと、「野毛」と呼ばれる極細の短冊や、円、三角、四角に…熊型!?まで、簡単に切れてしまいます。
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今回は色の違う箔を3種類(赤口洋箔、青口洋箔、アルミ箔)を用い、参加者の皆さまの自由な発想で意匠をこらしていただきました。小さな箔を貼り付けながら画面を構成していく過程は、予想以上に熱中し、あっという間に時間が経ちました。下図なしの即興制作にも関わらず、十人十色の個性が出ました。
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1日目は、下図を描き写す工程までして終了しました。

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【2日目/展覧会鑑賞と金箔地に着彩】
最初に「東西の絶景」展担当の、浦澤学芸員とともに、金箔を用いた作品を中心に鑑賞しました。金箔貼りを体験すると、美術館で目にする金屏風の価値に改めて気が付かされます。物質的な価値ももちろんですが、整然と美しく貼り付けられた金箔にも感嘆してしまいます。ちなみに、本展覧会のポスターに用いられている、横山大観《群青富士》は、屏風の裏側から全面に金箔が貼られ、表側からはさらに金泥を塗っているそうです。意図したマチエールを生み出すために、繊細な工夫が施されているのですね。
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実技室に戻り、いよいよ着彩の工程に入ります。日本画の場合、色を塗る前に絵の具類の準備が必須です。墨を摺り、顔料や胡粉(ごふん)は乳鉢で細かく砕き、顔料に混ぜる賿(にかわ)を湯煎で溶かします。こういった作業は時間がかかるため、講座では割愛し、スタッフが事前に用意しておきますが、日本画の作品を制作する上で基本となる、大切な工程です。
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日本画の顔料における「白」であり、着彩の下地としても用いられる「胡粉」は、定着剤である賿を馴染ませるため、団子状にして、お皿に100回程叩きつけます。その名も「百叩き」…コワイ呼び名ですね~。講座ではこの工程を皆さんと行いました。
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絵の具の準備方法や使い方を心得たところで、ようやく着彩開始。22
着彩の過程で金箔地をどのように生かすかで、仕上がりの雰囲気が変わってきます。皆さんそれぞれの工夫と個性が見てとれました。
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ついに完成!切り箔の作品も並べて発表会を行いました。一同に集めますと、金箔の輝きと、色とりどりの吉祥の図像がとても華やかで、実技室の一角がパワースポットのようでした。25
何千年も前から希少なものとして大切に扱われてきた金と、同じく時を越えて縁起ものとされてきた吉祥の図像、このふたつの取り合わせは本当に良いものですね。これぞまさに吉祥画といえる作品が出来上がったのではないでしょうか。
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