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4/13-14 創作週間スペシャル・日本画「姫屏風に描く」

「屏風爛漫-ひらく、ひろがる、つつみこむ」展関連講座として、姫屏風に日本画を描く講座が開催されました。日本では古くから間仕切りの道具として屏風が用いられ、そこに描かれた絵によって、祝祭の場や風情を味わうための空間を作りだす機能も果たしていたと考えられています。今回の講座では、卓上サイズの姫屏風を用いて、屏風の形式や特徴に着目した上で、構図や下絵の構想を膨らませ、日本画の画材を用いてオリジナルの二曲屏風を制作していただきました。(下に掲載の写真は講師による参考作品です)

3日下先生作品
講師には、当館で月に1回開催されているプログラム、「創作週間」で日本画のインストラクターを担当して下さっている、日本画家の日下文先生をお迎えしました。本講座は、展覧会の鑑賞とともに、姫屏風に描く工程を通して、日本画の道具や技法にふれていただくことも目的としています。日本画初心者の方の場合、講座内では仕上がらないことも考えられますが、後日「創作週間」内で日下先生の指導の元、ゆっくりと制作を進めていただくことができます。

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1日目のはじめに、「屏風爛漫」展を担当した石上学芸員とともに展覧会を鑑賞しました。額に収められた絵画が展示されている場合、キャンバスに描かれている内容について考察することで作者の意図に近づきますが、屏風の場合、道具として用いられることではじめて、描かれたものを存分に味わうことができます。例えば、屏風は蛇腹にすると自立が可能になるという特徴があります。展示されている屏風の多くは、山折り谷折りの部分を上手く利用して、見せたい場面を山側で強調し、奥行きを持たせる場面は谷側に描いていることが見てとれます。こういった特徴に着目した上で、オリジナル屏風の構想を練っていただきました。

1企画展鑑賞
実技室に戻り、日下先生の作品や画集なども参考に下図の考案にかかりました。

4下図資料

本番の屏風と同じ大きさの下図用紙に、自分の描こうとするモチーフを色々と配置しながら、どのようにすれば屏風のかたちを生かした図案になるかを考えます。下の写真の方は、二曲の屏風に右側に春、左側に秋の図を描こうとしています。日本画の制作工程では、下図をしっかりと描くことが重要ですので、先生が一人ずつアドバイスをして回ります。

5下図作成

百人一首をモチーフに選んだ方もいました。色とりどりの華やかな着物や和歌をしたためた書、そのまま用いることができるサイズ感といい、姫屏風との相性が抜群に良さそうです。

6百人一首下図

こちらの方は龍をモチーフに選ばれた様子。小さな姫屏風にどのように龍を収めるのか、仕上がりが楽しみです。

7龍下図

図案が決まり次第、色鉛筆で着彩計画を立てていきます。油絵を経験した方が日本画の制作工程を目にすると、綿密な計画に驚かれ「これだから日本画は大変…」などと言われたりします。しかしこれは、単に念入りにやっているというわけではなく、絵具を自分で作らなければならないということに加えて、作った絵具は数日で使えなくなってしまうという点、さらに、油絵のように絵具が乾かないうちから色を重ねていくことができないという画材の性質によるところが大きいです。絵具の準備も含めて、着彩の工程を計画的に段取る必要があるのです。

10着彩計画

午後からは下図を本画用の紙に描き写すため、昼休憩の前に鳥の子紙を水張りしました。今回は屏風の形式を考慮して、連続した画面も描きやすいよう、仕立てられた屏風に直接描く方法と、別紙に描いた絵を切り取って貼り付ける方法を選択できるようにしました。

8水張り

下図を描き写した人から、墨による骨描き(こつがき)、隈取り(くまどり)、着彩、と各自のペースで描き進めていくため、事前に、日下先生から基本的な道具の使い方や、描き方の説明がありました。

9墨絵具説明

骨描きの「骨」は輪郭線を指します。墨で描いた線は乾くと水に流れず、滲まず、最後まで残りますので、まさに絵の骨格となる線になります。

12骨描き

骨描きをした後、墨で隈(くま)を施します。隈とは濃淡のことで、凹凸感や立体感を出すために用います。

13墨濃淡

下の写真で日下先生は、右手に墨をぼかす平筆、左手に水を打つ用の平筆と墨を含ませた面相筆を持っています。ぼかす作業は水が乾かないうちに進めなければならないため、二~三本の筆を素早く巧みに使い分ける必要があります。数センチ四方をぼかす為にこれだけ繊細な作業が必要になることを体験すると、幅何メートルかに及ぶ展示室の屏風など、見る目が変わります。

11筆たくさん

2日目は着彩からスタートしました。写真の奥に見えているのは、水干(すいひ)と呼ばれる、日本画に用いられる絵具です。乳鉢で粉末状に砕き、膠(にかわ)を加え着彩に適した粘度まで指で練り上げたものを、水で溶いてから用います。一色作るのに15分以上かかるでしょうか…。日下先生が「絵具を作っている時は、次の段取りを考え、精神を集中する時間でもある」と話されていたのが印象的でした。下の写真からも見て取れるよう、水干絵具はマットな質感で鮮やかに発色します。

14着彩
絵具を塗り重ねる際は、先に塗った絵具が動かないよう、乾いてから一色ずつ重ねていきます。下の写真の方は、薄く溶いた橙色の水干絵具を、乾いては塗り…と繰り返し、紅葉の繊細な重なりを表現しています。

15着彩

ご自身で撮影された桜の写真を参考に描かれた方もいらっしゃいました。全体的にピンク色に塗られた画面の上に幹の色を重ね、ほんのり下の色を映したとことで、春の空気感が一段と感じられる色合いになっています。

16着彩

仕上がった方から、水張りした紙を屏風の窓枠の大きさに合わせて切り取り、貼付けました。この講座では、簡易的にスプレー糊を用いました。

17貼付け

講座の最後に鑑賞会を行いました。出来上がった方もそうでない方も、各々、作品についてお話していただき、日下先生からアドバイスをいただきました。小さな屏風の中にそれぞれの世界観や工夫が見て取れ、一点一点、とても魅力的な作品に仕上がりました。

講評会

出来上がった方の作品を1点ずつご紹介します。下の写真は、鮫の目にフォーカスした個性的な作品。小さな二つの画面を横断して泳ぐ鮫の姿が、見る者を水族館にいるような気分にさせてくれます。

鮫の目

屏風の右に春、左に秋の景を描いた作品。桜と紅葉の木を川の流れがつないでいます。鳥や川面の様子にも着目してみてください。

春秋図

森の木立を描いた作品。屏風の形態を生かし、奥行きを持たせて描かれています。足元には春の訪れが。散策しているような気持ちになります。

森の春

下の写真は模写による作品ですが、屏風の枠のバランスを考慮して絶妙な位置に人物が配置されています。落款も金地に映え、それらしい仕上がりになっています。

古画
桜の木とお孫さんを描いた作品。構図的に、桜を見上げている感じでしょうか。とても春らしい、瑞々しい雰囲気が伝わってきます。

孫と桜

百人一首を散りばめた作品。姫屏風の雰囲気と相まって何とも愛らしく、お部屋に飾っておきたいです。

百人一首
元気いっぱいのキャラクターが大きく描かれた作品。絵本のようで可愛いらしい感じがしますが、狛犬の阿吽を意識して描かれたそうです。深い…!

坊
当館所蔵の横山大観《群青富士》に着想を得て、夕焼けの図です。雲海も赤く染まっています。富士山に向かって中央の方に、ぐっと視線が引き寄せられ、小さな姫屏風の向こうに雄大な景色の広がりを感じられます。

夕焼け群青富士

根気よく墨の濃淡を重ねて描いた、龍の図。モチーフとしては大きめだったので、どのように画面に収めるのか最後まで分らなかったのですが、なんと!左側の画面をカッターで龍の形に切り抜き、貼り付けていました。斬新なアイデアです。姫屏風に収まりきらない龍の猛々しさが迫力を持って伝わってきます。

龍の図

ご紹介した作品は一部になりますが、いかがだったでしょうか。スタッフ一同、二日間でこのように完成度の高い作品が仕上がったことを嬉しく思うと同時に、皆さんが、観賞と制作を通して、屏風の特徴的な意匠をしっかりとふまえて制作されていることに感心しきりでした。現代において、屏風が一般的に用いられることはほとんどありませんが、日本人は誰しも、屏風的な物の見方を自然に受け入れられる感性を持ち合わせているのかもしれませんね。この講座で制作した姫屏風も、季節の折に眺め、愛でていただけるよう願っています。

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3/9-10「北井一夫と考える2020年代のアーティスト像」講座

「1968年 激動の時代の芸術」展関連講座として、出展作家の北井一夫氏を講師にお招きし、表現者として生き抜く術について考える2日間の連続講座を開催しました。講座の企画段階では、写真家として第一線で活躍されている北井さんに、写真の実技指導をしていただくといった内容を考えていましたが、北井さんから「今は写真の技術を学ぶ時代ではない」という言葉とともに、技術よりも、どう表現するか、どんな媒体で表現するか、これからの時代どうやって写真家として生き抜いていくかということに焦点を当てた方が面白い講座になるのでは、というご提案をいただきました。これを受け、より実践的な活動について考察を深めるため、北井さんからご紹介いただいた3組のゲストを交えての対談を中心とし、受講者の方に作品をご持参いただいた上で講評会を実施しました。

北井さん
初日は「本気で写真家を志す人」を対象に、作品持参という条件で受講者を募り、県内各地から約20名の参加がありました。講座室はいつもとは違う緊張感が漂い、講習中も懸命にノートを取っている姿が印象的でした。

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1日目は、ゲストに雑誌『日本カメラ』副編集長の村上仁一氏と、本展覧会を担当する川谷承子学芸員を交えて「これからの写真家」をテーマに対談が行われました。対談の前半は、1960年代から始まった北井さんの写真家としてのキャリアや生き方について、作品をスクリーンに投影しながら編集者としての視点で村上さんが北井さんに質問するかたちで進行しました。後半は、川谷学芸員が質問者となり、表現者としても活動をされている村上さんの視点も伺いつつ、1970年代~現在に至る日本の写真の評価、カメラ雑誌の衰退にともなう写真家の仕事の変化、写真集、個展、SNSといった作品を発表する場の変化など、写真を取り巻く時代背景やそれをふまえた現状について考察しました。

0309午前対談
午後は、北井さんと村上さんによる作品講評会を実施しました。学生の方、副業をしながら作家活動されている方、写真雑誌のコンペで受賞経験のある方など、年代も立場も様々の方が集まり、作品台を囲んでの講評会となりました。1人10分程度の持ち時間で、持参した作品をテーブルに並べ、撮影のテーマなども話していただきました。北井さんも村上さんも、お一人ずつ真剣に講評をしてくださり、時間を延長する場面が何度も見られました。若い方々は、自分は何をどのように撮っていけば良いのだろうという根本的な悩みを抱えているようで、それが作品にも表れていました。午前の対談時に、北井さんがドキュメンタリー写真についてふれる場面があり、写真家は被写体との関係性を写すのであって、それが全てであるといった内容を話されていましたが、たしかに、人を惹きつける作品は一貫した姿勢で被写体と向き合っている感じが伝わってきました。

講評会1
講評会2
0309講評会

2日目は「アートマーケットとの付き合い方」をテーマに、写真に限らず現代アートに関心のある方まで対象を広げて受講者を募り、県内外から40名近い参加がありました。

0310講座室

昨日にひきつづき、川谷学芸員が質問者となり対談が進行しました。昨日は表現者としての北井さんへの質問が中心でしたが、この講座では、表現することだけでなく売るという行為について、一歩踏み込んだ内容に質問が及びました。ゲストにはYumiko Chiba Associatesディレクターの千葉由美子氏を招き、北井さんの作品との出会いや、国内外のアートマーケットの動向、主に90年代半ば以降のプライマリーマーケット(作品が世に出る最初の市場)についてお話を伺いました。千葉さんは、2012年に東京都写真美術館で開催された「北井一夫  いつかみた風景」展で、それまでにも感じていた北井さんの一貫した作品表現や展示表現の姿勢を見てとり、大変な感銘を受けたそうです。また北井さんも千葉さんに大きな信頼を寄せているとのことでした。お二人の話を伺い、表現者と、その作品を扱うギャラリーが時間をかけて信頼関係を築き、その上でマーケットが成り立っているということに改めて気が付かされました。

0310午前対談

午後は、北井さんと千葉さんに加えて、1968年に実川美術を設立後、87年まで「自由が丘画廊」を運営された実川暢宏氏を特別ゲストとしてお招きしました。実川さんは、現代美術作品の収集がほとんどされていなかった1970年代前後から、先見の目を持って作品と関わってこられました。現代美術のアートマーケットがどのように展開し現在にいたるのかということを、私たちが知り得ない時代背景を次々と明るみに出して話され、非常に面白い対談となりました。最後に、これからアーティストを志す人は、とにかく面白い人間とたくさん関わり、その中で繋がりを作っていくことが大切だと話されていたのも印象的でした。

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2日目の対談後に質疑応答の時間を設けました。皆さんの問いや意見をできるだけ多く拾うために、予め質問用紙にご記入いただき、回収した後に質問内容を読み上げました。(以下一部抜粋)「ギャラリーがアーティストを見出すお話がありましたが、作家からアートマネージャーを探す、アプローチすることは活路がありますか?」、「自分が撮りたいものがわからなくなったり、迷ってしまう時に何をヒントに見つけていけばいいでしょうか?」といった作家志望の方々からの率直な質問が相次ぎ、普段ではなかなか聞かれないと思われる貴重な回答もいただきました。また、「マーケットの事など考えもしなかったのですが、とても面白かったです。見方が変わりました。」、「現代、1960年、1970年、それぞれの時代で評価されてきた人の背景や売れるために大切なことを学ぶことができて有意義でした。」といった、ここには書ききれないほどのご意見やご感想もいただき、盛大な拍手とともに講座を終了しました。私たち運営側もこういったスタイルの講座は初めてでしたが、出展作家である北井さんを通じて、編集者、ギャラリスト、コレクターといった、第一線で活躍する方々の視点を、受講者の皆さんとともに共有することができ、大変貴重な2日間となりました。このような機会を与えていただき、ご賛同くださった皆さまに心から感謝いたします。

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10/28 わくわくアトリエ「色をあつめて、光のカーテンをつくろう!」

10月さいごの日曜日に、小・中学生を対象としたワークショップ、わくわくアトリエ「色をあつめて、光のカーテンをつくろう!」が実施されました。このワークショップは、現在、静岡市内4か所(静岡県立美術館・静岡市美術館・中勘助文学記念館・東静岡アート&スポーツ/ヒロバ)で開催中の「めぐるりアート静岡」(10/23~11/11)とのコラボレーション企画で、当館の展示を担当されている鈴木諒一さんを講師にお招きしました。どんなワークショップがおこなわれたのか、当日の様子をご紹介します。

セロファンは透ける

はじめに、鈴木さんの自己紹介と作品紹介がありました。鈴木さんは、写真を主な手法として作品を発表されています。写真は、光の現象を留めることができる代表的な道具といえますが、今回のワークショップでは、カメラなどを用いずに色や光をとらえ、遊びながらその存在を自然に意識してもらえるようにと考案されました。

はじまり

午前中は、透明の板と油性マジックを持って、色あつめに出かけました。下の写真は、鈴木さんが色のあつめ方を子どもたちに説明しているところです。透明の板越しに、参加者の子の服の色を写し取っています。トレーシングペーパーなどを使ってイラストを写すのとは違い、現実の世界の色を写し取りますので、対象は無限に存在します。鈴木さんから「これはすごく難しい作業だけど、何を写してもいいし、上手くかたちを取らなくてもいい、あきたら途中でやめて他の色を写してもいいよ」という言葉を受けて、子どもたちはざわざわ…好奇心の高まりが感じられました。

透明な板に写す1

早速、美術館の中や外などへ、個々で色あつめにでかけました。「色あつめ」なんて学校では習わないでしょうから、子どもたちがどんな風に反応するだろうと思っていましたが、はじまるとすぐに方々へ散って、あちこちを移動しながら、たくさんの色をあつめていました。

透明な板に写す2

下の写真の子は、遠くの山や木々を写している様子でした。ひとつだけ赤くなっているところは、紅葉した木々でしょうか。しばらくの間、ずっとこの場所に留まって描いていたのが印象的でした。

透明な板に写す3

いつもなら目が届かないような塀の上に色を見つけた子もいました。お母さんも透明の板を持って協力してくれました。

透明な板に写す4
色はどこにあるかな…と探していると、見過ごしてしまうような小さなお花にも気が付くようで、どんどん、色をあつめに熱中していく様子が見てとれました。

透明な板に写す5
時々差し込む太陽の光に気をつけながら、寝転がって空の色をあつめている子もいました。

透明な板に写す6
つぎに、あつめた色を持ち寄り、実技室でプロジェクターの光に当てて鑑賞しました。暗い部屋で透明の板に光を当てると、油性マジックで色を塗った部分がスクリーンに投影されました。

投影1

鈴木さんが、子供たちに「何を見て色をあつめてきたの?」と問いかけると、次々と、写した色について教えてくれました。

投影3

色をあつめた透明の板をプロジェクターに接近させると、投影される光の見え方が変化しました。子どもたちは、板を近づけたり遠ざけたりと、感覚的に実験をしながら、板に着彩されたものと、そこに光を透過させることで現れる現象のちがいを楽しんでいる様子でした。

投影5

板の角度を変えたりしていると、時おり、思わぬ場所にも光が現れました。下の写真は、実技室の天井です。オーロラのようにゆらめいて、とても綺麗でした。

天井の光

午後は光を透過する柔らかい白い布に、セロファンやインクで色を施し「光のカーテン」をつくりました。布にセロファンを貼りつけて光をあてると、透明の板と同じように、セロファンの色を他の場所に写すことができます。布に赤青黄のインクで描くと、とても綺麗に発色しますが、光をあてても色を投影することはできません。ライトの光と自然光、どちらの光でも楽しむことができる、素敵なカーテンづくりが始まりました。

実験道具

何も描かれていない布が実技室にたくさん吊るされ、なんだか不思議な空間になりました。鈴木さんの意向で今回は、あえて机を使わずに、カーテンとともにゆらゆらと揺れつつ、布の表と裏を行き来しながら制作してもらいました。

カーテンがいっぱい

子どもたちにとっては、自分の背丈ほどもあるような大きな布ですが、みるみるうちに、カラフルに彩られていきました。

布に描く1
セロファンをくしゃくしゃにして、面白いかたちにカットしてみたり…光を当てたら、どんなふうに見えるでしょうか。

セロファンちょきちょき
カーテンの裏側から見ると、自分の描いたものや、色の重なりが、少し違ったふうにも見えてきます。

カーテンの向こう

ジャクソン・ポロックのように、インクを布に飛ばしながら描いている子もいました。青いセロファンのアクセントも素敵です。

布に描く2
布の一部分を縛って絞り染めのようにしてみたり、みんな次々と、思いついたアイデアを実験している様子が見て取れました。

布に描く4

カーテンが出来上がったところで、もう一度外に遊びに行きました。柔らかい布を手にした子どもたちは、なぜだかくるまれたくなるようで、被ったり、まとったり…小さな王子さまやお姫さまがたくさん出現しました。

外の光で遊ぶ1
午後の優しい光の中でふわりとカーテンを広げると、セロファンがきらきらと輝いて素敵でした。風を受けた布の様子や布越しの景色、子どもたちにはどんな風に見えていたのでしょうか。

外の光で遊ぶ2

みんなが外で遊んでいる間に、スタッフが実技室を暗室にして光源をセットしました。明るい外の光から突然の暗がりに、子どもたちのテンションも一層高まりました。

暗い部屋で遊ぶ

部屋は暗くしたまま、プロジェクターの光に当てたり、懐中電灯やランタンの光に布をかぶせたりしながら布の表情を楽しみました。壁や天井に不思議な光がたくさん現れ、太陽光のもとで遊んだ時とは違う、幻想的な色と光の世界が広がりました。

暗い部屋で遊ぶ2

誰かが、布に下から光を当てて見ると面白いことを発見すると、みんなが同様に実験を始めました。子どもが布の下に寝転がり、大人が布を持ってふわふわと上下させると、とても素敵な世界が見えるようで、時間を忘れて眺めていました。

実技室で行われる子ども向けワークショップは、作品(例えば絵画作品や彫刻作品など)を「作る」体験が中心になることが多いのですが、今回のワークショップでは「色」や「光」という捉えどころのないもの材料にして「光のカーテン」づくりに挑戦しました。子どもたちにとって、解釈が難しい場面が出てくるかもしれないと予想をしていましたが、そんな心配は全く無用で、遊んでいるうちにいつの間にか、たくさんの色と光が実技室にあふれていました。

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9/22-23 実技講座 日本画・金箔貼り「扇面に描く」

講評会
「幕末狩野派展」関連講座として、9月22日から二日間連続で扇面画を描く講座が開催されました。本展覧会に出展されている、橋本雅邦《暮山図・鶺鴒図扇面》は、明治38年にセオドア・ルーズベルト大統領夫妻に贈られたと考えられる扇で、外交において重要な役割を果たす贈答品だった可能性が高い作品です。扇というと、現代では、涼を求めてあおぐ夏扇が一般的ですが、時代をさかのぼると、戦の褒美や男女の契りの証として用いられるなど、単にあおぐだけでなく、表現や意思疎通の手段として重要な役割を果たしていたことがわかります。本講座では、そういった扇の用途にも着目した上で、大切な人へ想いを馳せながら「贈る扇」の図案を作成していただきました。

扇表を見る
はじめに、本展覧会を担当している野田麻美学芸員から、展覧会の見どころについてレクチャーを受けました。企画展示室の最後を飾る扇面を囲み、この扇が贈答品として用いられた経緯や、狩野派と扇の関係について話が及ぶと、参加者の方々は興味深そうに扇に見入っていました。俵屋宗達は扇屋だったことで有名ですが、狩野派も、もともとは扇屋として画業をスタートしたそうです。狩野派の系譜につらなりながらも、近代への橋渡しとしての役割を担った橋本雅邦が、最晩年に手がけた扇であったことを知り、感慨深い気持ちになると同時に、扇が人と人を繋ぎ関係性を深める重要な贈答品だったことに、改めて気づかされました。

強さん
実技の講師には、静岡県出身の日本画家、鈴木強先生をお招きしました。鈴木先生の作品は、金箔を用いた吉祥画が多く、当館の講座では日本画や金箔貼りを中心に、10年以上ご指導をいただいています。

【参考作品】波間に雀&昇り鯉
今回の講座では参考作品として、鈴木先生描き下ろしの扇面画を扇子に仕立てたものを用意しました。《波に雀》(左)には金銀砂子が、《昇鯉》(右)にはひび割れたようなテクスチャーの切箔が施されています。自分の描く図案に合わせて、どのように箔を用いるかも腕の見せどころになります。

資料を見る

鑑賞の後、各々の扇面画制作にかかりました。今回は贅沢にも、展覧会会場の作品をスケッチする時間を設け、図録なども参考に主題となるモチーフを選択し、図案を考えました。

下図作成
上の写真の参加者の方は、2羽の鶴を主役に描くことを決めました。扇面というアーチ状の画面を活かし、モチーフをどこに配置するべきか、考えを巡らせます。

下図を本紙に写す

下絵が出来次第、本番用紙へと写していきます。日本画の制作工程では「写す」という作業が度々あります。下絵を描く→下絵をトレーシングペーパーなどの透ける薄紙に写す→写した下絵を転写紙で本番用紙に写す…と、最低でも3回は同じ図案を描くため、どうしても面倒な気持ちになりますが、都度、新鮮な心持ちで取り組むことで、出来栄えも大きく変わります。

胡粉と絵具レクチャー
皆さんの下絵が出来上がってきたところで、鈴木先生から、墨、胡粉、水干、膠といった、日本画特有の画材について、扱い方のレクチャーがありました。今回の講座では、扇を仕立てた時に滲みなどが生じないよう、特殊なメディウムも使用しました。

墨で骨描き

本番用の図引紙(扇面用紙)に写した下絵を墨で描き起こしていきます。この工程を「骨描き」と呼びます。墨で引いた線は乾くと滲まず、流れませんので、まさに絵の骨格となる線になります。

着彩2龍
上の写真は、当館所蔵品で、本展覧会にも出展されている狩野永岳《富士山登龍図》を参考に描いた図案です。本物は掛幅装で縦長の構図ですが、扇面に合わせて、右に暗雲から現れる龍の頭部と、左に富士を配置しています。扇子を少しずつ開く度に臨場感が増す構図に仕上がっています。

着彩1日目終了

扇面を池に見立て、蓮と鴨を描いていた方の作品です。右側に白く抜けている蓮の葉には、金箔を施す予定とのことでした。皆さんの着彩の目途が立ったところで、どんな風に箔の意匠を施そうかと思案を巡らせつつ、1日目を終了しました。

砂子撒き
2日目の午前中に、箔を用いた様々な技法のレクチャーを受けました。最初に「砂子撒き」のやり方を教わりました。竹製の筒に金網の張られた「砂子筒」に箔を入れ、固めの刷毛でかき回すと、網目から箔がはらはらと落ちてきました。砂子を撒きたい場所に予め膠を引いておくことで、膠が糊の役目を果たし、箔が画面に付着します。

砂子撒き直後
上の写真は、金箔を砂子撒きした直後の状態です。まだ箔が立っているのがわかります。この後、膠が半渇きになるまで待ち、あて紙をした上から固いもので箔を押して定着させます。

箔あかし
つづいて「箔あかし」を教わりました。金箔は非常に薄く、1枚で扱うことが困難です。「あかし紙」という紙に箔を貼りつけた状態にすることで、画面などに施すことが可能になります。箔を上手くあかせるまでにも経験を要するため、この体験の後に、狩野派が手がけた金屏風などを目にすると、技術力の高さに驚愕します。

三吉箔のり1

画面を金箔で埋め尽くす際には、あかした箔を四角いまま貼り付けますが、今回の講座では、各自の意匠に合わせて箔を貼れるよう、特殊な「箔のり」も用いました。上の写真は、雲の部分に箔のりを塗り、あかした銀箔を貼り付けたところです。ひと通りのレクチャーを受け、各々の図案に最適と思われる技法で箔を施しました。

鶴に砂子
鶴を描いた方は、明るい緑色の背景に金銀の砂子を撒きました。まさに吉祥画という雰囲気で、お祝い事に贈れそうな、華やかな仕上がりになりました。

鶴
下の写真では、箔を貼り付けた後、膠が乾ききる前に固い刷毛で箔の表面を叩いています。こうすることで箔が少し剥げ、趣のあるテクスチャーを作り出すことができます。

箔をたたく2
波間に宝船、その間に散らすように金銀箔が施され、お正月にも飾れそうな、お目出たい雰囲気に仕上がりました。

宝船

2日間というタイトなスケジュールで、扇面画の意匠の考案から着彩、金箔貼りまでを全員終えることができました。途中、参加者の方から「この扇は娘に…」といった話も耳にしましたが、時間が許せばお一人ずつ、扇に込めたメッセージについて、お話をいただきたかったです。最後に皆さんの作品を紹介します。どんな想いを込めて制作されたか、想像していただけると嬉しいです。

梅
山水
龍
芍薬
桜
椿
月見酒
稲
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扇子に仕立て上がるのはまだ先になりますが、出来上がりが本当に楽しみです。


 

 

 

 

 

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8/25 未就学児向けワークショップ「トンガリ帽子をかぶって展覧会に行こう!」

実技室プログラムのお知らせです。

8月25日に「安野光雅のふしぎな絵本展」関連ワークショップの、「トンガリ帽子をかぶって展覧会に行こう!」が開催されました。
今回は未就学児を対象として、午前と午後で1回ずつ開催し、子どもたちの声で賑やかな1日になりました。

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それではどのようなワークショップになったのか、当日の様子を、午前と午後の部をあわせてご覧ください。

今回のファシリテーターは、当館実技室のインストラクターの丸山成美氏です。
ワークショップの冒頭では、まずは何歳の子が参加しているか、質問をして挙手していただきました。最年少で1歳、最年長で7歳と、幅広い年齢の子どもたちが参加してくれました。当日が美術館デビューの子もたくさんいたので、デビュー記念!ということで、拍手で歓迎しました。

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展示に出品されていた作品には、このような小さな妖精さんがたくさん出てきます。展示室に向かう前に、小さなグループに分かれて、まずはこの妖精さんと同じように、トンガリ帽子を作ってみました。

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帽子は、画用紙を頭のサイズにあわせてとめ、あごヒモをつけたら完成!これで大人も子どもも、妖精さんの仲間入りです。今回のワークショップでは、小グループに分かれて進行したので、普段接することのない年齢のお友達と出会いがあったようです。教えてあげたり、作ってもらったり、協力し合っている姿を度々見かけました。

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そして、展示室で皆で楽しく作品を見るために必要なお約束ごとをお話しました。
それでは、トンガリ帽子をかぶって、「ふしぎ」のせかいへ出発です!

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展示室に到着し、安野さんの作品を見ると、さっそく子どもたちは「ここに妖精さんがいるよ」とたくさんの妖精さんを見つけてくれました。

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こちらは、「あいうえおの本」コーナー。みなさん活発に見つけたものを教えてくれました。

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展示室内には、さわれる作品もいくつかありました。「なんでこうなるの?こうしてみたら、どうなるの?」と考えながら楽しんでくれました。

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「た」に乗ってあそんでいる子もいました。まるで作品に出てきそうな光景ですね。

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そして最後のお部屋には、妖精さんたちがたくさん飛んでいます。トンガリ帽子をかぶった参加者の皆さんも、違和感なくふしぎの世界に溶け込んでいます。

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実技室にもどってから、「あいうえおの本」をみんなでもう一度じっくり鑑賞しました。こちらの作品には、「あ」からはじまる何かが、描かれています。さあいくつ見つけられるかな?

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見ればみるほど、いろんなものが見つかり、安野さんの細やかな仕掛に大人も思わず唸ってしまいます。
4つの作品を鑑賞したあと、たくさん見つけてくれたみんなには、ちょっとしたご褒美をお渡ししました。

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こちら、がま口のお財布です。
中には、なんと「けんびぎんこう」が発券した、子ども用のお金が入っています。
このお金で、みんながかぶっているトンガリ帽子の飾り付けをするための、シールが買えちゃいます。

気が付くと、子どもたちの後ろにはお店が並んでいます。さあ、お買いもののスタートです。

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たくさんの種類から、シールを選んでお金と交換します。それぞれのお店で売っているシールが異なるので、お店をはしごしてシールを買い集めます。好きなカブトムシをたくさん買う子もいれば、自分の名前の文字をみつけて、買っていく子もいました。

シールをえらぶ

 

買ったシールは、このように帽子に貼って飾り付けをします。

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こちらは工作コーナー。色ペンで好きな絵を描いて、帽子に貼りつけたりすることができます。

帽子をデコろう2

 

帽子をデコろう

 

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だいぶ帽子の飾り付けが充実してきたところで、お時間となりました。
それぞれ、すてきなオリジナルのトンガリ帽子が完成しました!

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最後にみんなで写真撮影を楽しみました。

 

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集合写真(午後)

 

今回のワークショップは1回2時間、帽子をつくり、展示室へ行き、また実技室へ戻り…と、未就学児にとってはハードスケジュールだったと思いますが、終始皆さん最後まで楽しく参加してくださいました。子どもたちの「また来るね!」という言葉や、保護者のかたから「子どもたちの美術館へのハードルが下がり、とても楽しく過ごせた」とのお声をいただき、スタッフ一同嬉しく思います。
静岡県美では、小さなお子さんや、ご友人と一緒に、作品の感想を話しながら、気軽に作品鑑賞ができるよう、「トークフリーデー」を設けています。毎週水曜と土曜日(ただし、展覧会の初日が水曜日又は土曜日だった場合、その日は除く)に実施しています。ぜひ、またお子さまと一緒に展示をお楽しみください。皆さまの、またの越しをお待ちしています!

 

 

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