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9/22-23 実技講座 日本画・金箔貼り「扇面に描く」

講評会
「幕末狩野派展」関連講座として、9月22日から二日間連続で扇面画を描く講座が開催されました。本展覧会に出展されている、橋本雅邦《暮山図・鶺鴒図扇面》は、明治38年にセオドア・ルーズベルト大統領夫妻に贈られたと考えられる扇で、外交において重要な役割を果たす贈答品だった可能性が高い作品です。扇というと、現代では、涼を求めてあおぐ夏扇が一般的ですが、時代をさかのぼると、戦の褒美や男女の契りの証として用いられるなど、単にあおぐだけでなく、表現や意思疎通の手段として重要な役割を果たしていたことがわかります。本講座では、そういった扇の用途にも着目した上で、大切な人へ想いを馳せながら「贈る扇」の図案を作成していただきました。

扇表を見る
はじめに、本展覧会を担当している野田麻美学芸員から、展覧会の見どころについてレクチャーを受けました。企画展示室の最後を飾る扇面を囲み、この扇が贈答品として用いられた経緯や、狩野派と扇の関係について話が及ぶと、参加者の方々は興味深そうに扇に見入っていました。俵屋宗達は扇屋だったことで有名ですが、狩野派も、もともとは扇屋として画業をスタートしたそうです。狩野派の系譜につらなりながらも、近代への橋渡しとしての役割を担った橋本雅邦が、最晩年に手がけた扇であったことを知り、感慨深い気持ちになると同時に、扇が人と人を繋ぎ関係性を深める重要な贈答品だったことに、改めて気づかされました。

強さん
実技の講師には、静岡県出身の日本画家、鈴木強先生をお招きしました。鈴木先生の作品は、金箔を用いた吉祥画が多く、当館の講座では日本画や金箔貼りを中心に、10年以上ご指導をいただいています。

【参考作品】波間に雀&昇り鯉
今回の講座では参考作品として、鈴木先生描き下ろしの扇面画を扇子に仕立てたものを用意しました。《波に雀》(左)には金銀砂子が、《昇鯉》(右)にはひび割れたようなテクスチャーの切箔が施されています。自分の描く図案に合わせて、どのように箔を用いるかも腕の見せどころになります。

資料を見る

鑑賞の後、各々の扇面画制作にかかりました。今回は贅沢にも、展覧会会場の作品をスケッチする時間を設け、図録なども参考に主題となるモチーフを選択し、図案を考えました。

下図作成
上の写真の参加者の方は、2羽の鶴を主役に描くことを決めました。扇面というアーチ状の画面を活かし、モチーフをどこに配置するべきか、考えを巡らせます。

下図を本紙に写す

下絵が出来次第、本番用紙へと写していきます。日本画の制作工程では「写す」という作業が度々あります。下絵を描く→下絵をトレーシングペーパーなどの透ける薄紙に写す→写した下絵を転写紙で本番用紙に写す…と、最低でも3回は同じ図案を描くため、どうしても面倒な気持ちになりますが、都度、新鮮な心持ちで取り組むことで、出来栄えも大きく変わります。

胡粉と絵具レクチャー
皆さんの下絵が出来上がってきたところで、鈴木先生から、墨、胡粉、水干、膠といった、日本画特有の画材について、扱い方のレクチャーがありました。今回の講座では、扇を仕立てた時に滲みなどが生じないよう、特殊なメディウムも使用しました。

墨で骨描き

本番用の図引紙(扇面用紙)に写した下絵を墨で描き起こしていきます。この工程を「骨描き」と呼びます。墨で引いた線は乾くと滲まず、流れませんので、まさに絵の骨格となる線になります。

着彩2龍
上の写真は、当館所蔵品で、本展覧会にも出展されている狩野永岳《富士山登龍図》を参考に描いた図案です。本物は掛幅装で縦長の構図ですが、扇面に合わせて、右に暗雲から現れる龍の頭部と、左に富士を配置しています。扇子を少しずつ開く度に臨場感が増す構図に仕上がっています。

着彩1日目終了

扇面を池に見立て、蓮と鴨を描いていた方の作品です。右側に白く抜けている蓮の葉には、金箔を施す予定とのことでした。皆さんの着彩の目途が立ったところで、どんな風に箔の意匠を施そうかと思案を巡らせつつ、1日目を終了しました。

砂子撒き
2日目の午前中に、箔を用いた様々な技法のレクチャーを受けました。最初に「砂子撒き」のやり方を教わりました。竹製の筒に金網の張られた「砂子筒」に箔を入れ、固めの刷毛でかき回すと、網目から箔がはらはらと落ちてきました。砂子を撒きたい場所に予め膠を引いておくことで、膠が糊の役目を果たし、箔が画面に付着します。

砂子撒き直後
上の写真は、金箔を砂子撒きした直後の状態です。まだ箔が立っているのがわかります。この後、膠が半渇きになるまで待ち、あて紙をした上から固いもので箔を押して定着させます。

箔あかし
つづいて「箔あかし」を教わりました。金箔は非常に薄く、1枚で扱うことが困難です。「あかし紙」という紙に箔を貼りつけた状態にすることで、画面などに施すことが可能になります。箔を上手くあかせるまでにも経験を要するため、この体験の後に、狩野派が手がけた金屏風などを目にすると、技術力の高さに驚愕します。

三吉箔のり1

画面を金箔で埋め尽くす際には、あかした箔を四角いまま貼り付けますが、今回の講座では、各自の意匠に合わせて箔を貼れるよう、特殊な「箔のり」も用いました。上の写真は、雲の部分に箔のりを塗り、あかした銀箔を貼り付けたところです。ひと通りのレクチャーを受け、各々の図案に最適と思われる技法で箔を施しました。

鶴に砂子
鶴を描いた方は、明るい緑色の背景に金銀の砂子を撒きました。まさに吉祥画という雰囲気で、お祝い事に贈れそうな、華やかな仕上がりになりました。

鶴
下の写真では、箔を貼り付けた後、膠が乾ききる前に固い刷毛で箔の表面を叩いています。こうすることで箔が少し剥げ、趣のあるテクスチャーを作り出すことができます。

箔をたたく2
波間に宝船、その間に散らすように金銀箔が施され、お正月にも飾れそうな、お目出たい雰囲気に仕上がりました。

宝船

2日間というタイトなスケジュールで、扇面画の意匠の考案から着彩、金箔貼りまでを全員終えることができました。途中、参加者の方から「この扇は娘に…」といった話も耳にしましたが、時間が許せばお一人ずつ、扇に込めたメッセージについて、お話をいただきたかったです。最後に皆さんの作品を紹介します。どんな想いを込めて制作されたか、想像していただけると嬉しいです。

梅
山水
龍
芍薬
桜
椿
月見酒
稲
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扇子に仕立て上がるのはまだ先になりますが、出来上がりが本当に楽しみです。


 

 

 

 

 

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8/25 未就学児向けワークショップ「トンガリ帽子をかぶって展覧会に行こう!」

実技室プログラムのお知らせです。

8月25日に「安野光雅のふしぎな絵本展」関連ワークショップの、「トンガリ帽子をかぶって展覧会に行こう!」が開催されました。
今回は未就学児を対象として、午前と午後で1回ずつ開催し、子どもたちの声で賑やかな1日になりました。

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それではどのようなワークショップになったのか、当日の様子を、午前と午後の部をあわせてご覧ください。

今回のファシリテーターは、当館実技室のインストラクターの丸山成美氏です。
ワークショップの冒頭では、まずは何歳の子が参加しているか、質問をして挙手していただきました。最年少で1歳、最年長で7歳と、幅広い年齢の子どもたちが参加してくれました。当日が美術館デビューの子もたくさんいたので、デビュー記念!ということで、拍手で歓迎しました。

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展示に出品されていた作品には、このような小さな妖精さんがたくさん出てきます。展示室に向かう前に、小さなグループに分かれて、まずはこの妖精さんと同じように、トンガリ帽子を作ってみました。

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帽子は、画用紙を頭のサイズにあわせてとめ、あごヒモをつけたら完成!これで大人も子どもも、妖精さんの仲間入りです。今回のワークショップでは、小グループに分かれて進行したので、普段接することのない年齢のお友達と出会いがあったようです。教えてあげたり、作ってもらったり、協力し合っている姿を度々見かけました。

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そして、展示室で皆で楽しく作品を見るために必要なお約束ごとをお話しました。
それでは、トンガリ帽子をかぶって、「ふしぎ」のせかいへ出発です!

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展示室に到着し、安野さんの作品を見ると、さっそく子どもたちは「ここに妖精さんがいるよ」とたくさんの妖精さんを見つけてくれました。

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こちらは、「あいうえおの本」コーナー。みなさん活発に見つけたものを教えてくれました。

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展示室内には、さわれる作品もいくつかありました。「なんでこうなるの?こうしてみたら、どうなるの?」と考えながら楽しんでくれました。

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「た」に乗ってあそんでいる子もいました。まるで作品に出てきそうな光景ですね。

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そして最後のお部屋には、妖精さんたちがたくさん飛んでいます。トンガリ帽子をかぶった参加者の皆さんも、違和感なくふしぎの世界に溶け込んでいます。

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実技室にもどってから、「あいうえおの本」をみんなでもう一度じっくり鑑賞しました。こちらの作品には、「あ」からはじまる何かが、描かれています。さあいくつ見つけられるかな?

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見ればみるほど、いろんなものが見つかり、安野さんの細やかな仕掛に大人も思わず唸ってしまいます。
4つの作品を鑑賞したあと、たくさん見つけてくれたみんなには、ちょっとしたご褒美をお渡ししました。

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こちら、がま口のお財布です。
中には、なんと「けんびぎんこう」が発券した、子ども用のお金が入っています。
このお金で、みんながかぶっているトンガリ帽子の飾り付けをするための、シールが買えちゃいます。

気が付くと、子どもたちの後ろにはお店が並んでいます。さあ、お買いもののスタートです。

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たくさんの種類から、シールを選んでお金と交換します。それぞれのお店で売っているシールが異なるので、お店をはしごしてシールを買い集めます。好きなカブトムシをたくさん買う子もいれば、自分の名前の文字をみつけて、買っていく子もいました。

シールをえらぶ

 

買ったシールは、このように帽子に貼って飾り付けをします。

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こちらは工作コーナー。色ペンで好きな絵を描いて、帽子に貼りつけたりすることができます。

帽子をデコろう2

 

帽子をデコろう

 

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だいぶ帽子の飾り付けが充実してきたところで、お時間となりました。
それぞれ、すてきなオリジナルのトンガリ帽子が完成しました!

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最後にみんなで写真撮影を楽しみました。

 

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集合写真(午後)

 

今回のワークショップは1回2時間、帽子をつくり、展示室へ行き、また実技室へ戻り…と、未就学児にとってはハードスケジュールだったと思いますが、終始皆さん最後まで楽しく参加してくださいました。子どもたちの「また来るね!」という言葉や、保護者のかたから「子どもたちの美術館へのハードルが下がり、とても楽しく過ごせた」とのお声をいただき、スタッフ一同嬉しく思います。
静岡県美では、小さなお子さんや、ご友人と一緒に、作品の感想を話しながら、気軽に作品鑑賞ができるよう、「トークフリーデー」を設けています。毎週水曜と土曜日(ただし、展覧会の初日が水曜日又は土曜日だった場合、その日は除く)に実施しています。ぜひ、またお子さまと一緒に展示をお楽しみください。皆さまの、またの越しをお待ちしています!

 

 

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8/5 実技講座 オリジナルの「かぞえてみよう」をつくろう

実技室プログラムのお知らせです。

「安野光雅のふしぎな絵本展」の関連講座として、 8月5日に実技講座の水彩画編、「オリジナルの「かぞえてみよう」をつくろう」 を開催しました。

今回の展示にも原画が出品されていた、安野光雅氏の絵本『かぞえてみよう』は、ページを追うごとに季節が進み、少しずつ増えていく木や家を数えながら、小さな町の展開を楽しむことができる絵本です。 今回の講座では、この『かぞえてみよう』をテーマに、オリジナルの「かぞえてみよう」を水彩で描いて、かんたんな絵本にしました。今回の講師は、当館実技室のインストラクター、野呂美樹さんです。

講座の冒頭では、最初に安野さんのご紹介をした後に、『かぞえてみよう』を皆で読みました。読んだことがあるかたも何名かいらっしゃったのですが、改めて、みんなで何が描かれているかお話をしながら探してみました。

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そして、ページ毎に見つけたモチーフをホワイトボードに書きだします。

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人物の動きにも着目すると、様々なドラマを想像することができます。参加者同士で、「この人は何をしているのかな?」「この人はこうなんじゃない?」と会話をしながら絵本を楽しみました。 短い時間でしたが、それぞれのページに描かれている、その月ならではのモチーフが沢山見つかりました。今まで本を読んだことがあった人も、新しい発見があったようです。

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これをヒントにして、自分の「かぞえてみよう」に何を描くか、決めていきます。目標は、3つの数字をテーマに、3ページ描くことです。『かぞえてみよう』のルールに乗っ取って描くので、例えば「10」の数字を選ぶと、モチーフをそれぞれ、10個描く必要があります。この段階でお昼前、残り3時間程度でしたので、時間と相談して数字を選びます。一方で、周りの人たちとお話をするうちに、いろんなアイディアが浮かんできて、段々と画面がうまってきます。

 

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着彩に入る前に、今回使う水彩と画材の説明をしました。 水彩というと、小学校のときに使った記憶がある方が多いと思いますが、改めて水彩絵の具の特長を説明しつつ、技法をいくつか紹介しました。  まず「ウエット・イン・ウエット」です。あらかじめ紙に水分を含ませたあとに、水分を多めに含んだ筆で色をとり、筆先で色を落とすと、色がにじんで表れます。そして「ドライ・オン・ウエット」、こちらは乾いた上に塗り重ねることで、水彩の透明感を用いた表現ができます。

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そして、「マスキングインク」を用いた技法もご紹介しました。こちらは、画面に白抜きの箇所を作りたい時に便利です。白抜きというと、繊細な作業が必要で難しそうに見えますが、マスキングインクを使うと、おもしろいほど簡単にできます。あらかじめ白抜きにしたい箇所にマスキングインクを塗っておき、乾いたらその上から色を塗ります。絵の具が乾いたら、擦って落とすと、白抜きができているという仕組みです。

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こちらは途中でスタッフがマスキングインクで試作した花火です。白抜きした後に色をつけても良いですね。

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筆のつかい方、パレットのつかい方、水分のコツなども一通り説明した後に、いよいよ着彩に入ります。今回は作品のサイズが小さいので、細かい塗りが必要になります。

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極細、面相筆、平筆の3種類の筆を使い分けつつ、塗っていきます。
同じ色を使う場所を一気に塗ったりなど、皆さん計画的に進めていらっしゃいました。

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あっという間に時が経ち、最後に作品の鑑賞会をしました。安野さんの絵本では、小さな町が舞台になっていますが、皆さんの作品では「東京」や「京都」など、日本の具体的な地名を設定した作品がいくつか見られました。夏休みシーズンということで、この夏の思い出も交えた作品もありました。

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未完成の作品が多かったのですが、後日の創作週間で、続きを制作してくださった方がいらっしゃいました。
完成作品をご紹介させていただきたいと思います。

完成すると、このような本型になります。

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では中のページをそれぞれ見てみましょう。
それぞれ何の数字をテーマにしているか、考えてみてくださいね。

<1ページ目>

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<2ページ目>

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<3ページ目>

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それぞれ何の数字をテーマにしているか、お分かりでしょうか?
静かな場所が、ページを追うごとに、たくさんの個性的なお店が立ち並ぶ賑やかな町になりました。
ページごとに、マスキングインクをお使いになっていますが、同じ白抜きでも、雪だったり、花に見えたりするのが面白いですね。

 

さらに、もう一つ作品をご紹介したいと思います。

<1ページ目>

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<2ページ目>

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<3ページ目>

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ページを追うごとに、少しずつ木や人増えていき、生活の様子がうかがえるようになりました。
描かれているものや、右上に描いていただいた数字も見ると、季節も進んでいるようです。
一番最後のページの空は、夏の真っ青な空の色ですね。

お二人とも、素敵な作品を完成していただき、ありがとうございました。
今回は安野さんの筆致を追って、小さな仕掛や工夫を見つけることで、安野さんの作品をいつもと違った角度からお楽しみいただく機会になりましたら幸いです。

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8/26 わくわくアトリエ「みんなで作ろう!あ・い・う・え・お からはじまる切り絵」

8月最後の日曜日に「安野光雅のふしぎな絵本展」関連ワークショップ、わくわくアトリエ「みんなで作ろう!あ・い・う・え・おからはじまる切り絵」が開催されました。講師には、毎年、切り絵ワークショップでお世話になっている福井利佐さん(切り絵アーティスト)をお招きしました。今回のワークショップのアイデアは、安野光雅さんの絵本の大ファンだという福井さんが『あいうえおの本』から着想を得て考えてくださいました。静岡の「し」と県立美術館の「け」からはじまる言葉を切り絵で制作し、さらに皆さんが作ったひとつひとつの作品をつなげて、高さ約2mの大きな「し」と「け」の文字を形づくりました。

「し」と「け」
それでは、午前・午後と各回にご参加いただいた皆さんの制作の様子を追いながら、素敵な作品が出来上がるまでをご紹介します。
はじめに、福井さんと一緒に展覧会を鑑賞しました。この後のワークショップのウォーミングアップも兼ねて、『あいうえおの本』の原画コーナーを中心に、絵の隅々までよく見ていただきました。

展覧会へGO
あいうえおの本コーナー

安野さんの作品と展覧会の雰囲気を少し味わったところで、ふしぎの世界からやってきたトンガリ帽子のお姉さんの待つ、第6展示室に集合しました。こちらの展示室の壁面に、ワークショップで制作した切り絵作品が展示されることになります。福井さんから「みなさんが作った作品を美術館に展示しますよ」との言葉を受け、少しどよめきました。こんなに大きな壁を埋める作品が出来上がるかしら…と。実はスタッフも内心ドキドキでした。

トンガリ帽子のお姉さん6室
実技室に戻り、『あいうえおの本』をモニターに映しながら、今回、展示されていなかった文字や、切り絵で制作する「し」と「け」のページを、皆さんと鑑賞しました。下の写真は、展示室にも原画のあった「さ」のページです。パッと見てわかる「さる」や「さんりんしゃ」の他に、装飾の枠の中にもたくさんの「さ」のつくアイテムが隠れています。福井さんが「見つけられた人は教えてね」と声をかけると、子どもたちが前のめりになって発表してくれました。

あいうえおの本を見ています1
一生懸命、絵本を見つめる子どもたち。知ってる言葉を誰よりも早く言いたい!そんな気持ちが伝わってきました。

あいうえおの本を見ています2
あいうえおのウォーミングアップを終えたところで、「し」のつく言葉のアイデア出しをしました。


「し」のアイデア出し
しまうま、しか、しいたけ、しっぽ…大人も子どもも「し」のつく言葉をたくさん発表してくれ、あっという間にホワイトボードがいっぱいになりました。これらの言葉も参考にして、各自、切り絵の下図を考案しました。

ホワイトボード「し」
制作に入る前に、福井さんからカッターの使い方のレクチャーを受けました。

切り方レクチャー
切る時は、中心から外側へ、小さな面積から大きな面積へと進めていくと、きれいな仕上がりになるとのことで、このことを時々思い出しながら制作を進めるのが、とても大切です。

2切り方レクチャー
今回のワークショップは、小学校低学年の子どもが多く参加していたこもあり、初めてカッターを使う子どももいました。刃の向きや添える手の位置など、大人にとっては当たり前のことも、子どもたちにはやり慣れない、注意を要する作業です。福井さんやスタッフ、親御さんのフォローのもと、一生懸命に取り組みました。

カッター練習
そして、福井さんの作品「しばいぬ」を参考に、切るところと残すところ、仕上がりのサイズなどを確認しました。参考作品とはいえ、今回のワークショップのために制作してくださいました。上手すぎる…。喜ぶ子どもたちをよそに、親御さんたちのやる気スイッチが入ったように感じました。

福井さんとしばいぬ
そしていよいよ、各自で「し」のつく言葉のモチーフを見つけ、下絵作りが始まりました。何も見ないですらすらと描きあげてしまう方もいれば、

①下図
図鑑を参考に下絵を描く方や、

下図②
スマホの画像を見ながら描く子どももいました。時代を感じます…。

下図③
下絵が描けたら、その用紙をそのまま色紙に貼りつけて、下絵と一緒にカットしていきます。下の写真の方は、3点も作ってくださいました。

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今回は、たくさんのモチーフが必要だったため、スタッフも制作に加わりわました。必死です。

スタッフ制作中
最近、学校ではあまりカッターを使わせないそうで、子どもたちにとっては新鮮な作業のようでした。扱いに四苦八苦しながらも、みんな夢中で取り組んでいました。

切ってます①
絵に描いたものが少しずつ切り絵作品になっていく楽しさや、

切ってます②
下絵を外したらどんな風に出来上がっているかな、というわくわく感が、作品へと向かう集中力になっているのかもしれません。

切ってます③
制作から1時間も経たないうちに、作品が出来上がってきました。1番のりは「ショートケーキ」でした。美味しそうです。

ショートケーキ
1人出来上がると次々に作品が仕上がり、しろくまとジュゴンも登場しました。

できてきた①
右から、シャープペン、シャボン玉、ジーンズ、しましま、シカ、しいたけ、しそ、シロフォンとマレット、シマリス、清水エスパルス、新幹線、しり…

できてきた②
出来上がった作品が増えてきたところで、福井さんが「し」のかたちに整え始めました。

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最初の心配をよそに、どんどん大きくなって…立派な「し」が形を現しました!下の写真は、実技室の壁に貼れるよう、ぎゅっと詰めた状態ですが、それでも高さ150cmはあるでしょうか。(完成の一歩手前の写真です)

「し」完成
ワークショップのさいごに、作品の名前をひとつひとつ発表していただき、大成功のうちに午前の回を終えました。

これなあに
午後の部の様子も、少しご紹介します。午後は県立美術館の「け」からはじる言葉を切り絵で制作しました。

午後
ご家族でご参加いただいた中には、午前よりも小さな子もいましたが、とにかく一緒にチャレンジ。「けむし」を制作中です。


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4人のお子さんとご参加のお母さんは、子どもたちの作品を手伝いながら、自分の作品「けっこんゆびわ」も仕上げていました。すごい!

お母さんと子どもたち
下の写真の子は「けいこうとう(丸型)」を作ろうとしています。実は直線型の蛍光灯と2作品作ってくれました。素敵なアイデアです。

蛍光灯
こちらは親子で「げた」の左右を制作中です。色を合わせているところも素敵ですね。

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下の写真の右の方に少し見えているのが、「け」の左側です。(きたろうの)げた、けむし、ケーキ、けやき、蛍光灯(直線型)、ケイマフリ(鳥)、剣…、福井さんが持っているのは、ふっくらとして美味しそうなケガニです。

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そして、午後も素敵な「け」が完成しました!どちらの文字も時間内に予想以上の数と出来映えで仕上がり、皆さんのがんばりに心から感謝です。

「し」と「け」実技室

ワークショップで制作した作品は、8/26~9/2の間、「安野光雅のふしぎな絵本展」第6展示室内に展示され、会期末に訪れたたくさんのお客様にお楽しみいただきました。福井さん、今年も素敵なワークショップをありがとうございました!

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8/4 つみきワークショップ「つみきのそのさんとあそぼう!ふしぎのせかい」

「安野光雅のふしぎな絵本展」関連ワークショップ第1弾として、つみきのそのさん(つみきアーティスト)による、つみきワークショップが行われました。そのさんは、県内各地で「つみき」をコミュニケーションツールとしたユニークなワークショップを多数開催されています。県美では初めての、そのさんのつみきワークショップでしたが、ママ友間の情報網の力か、募集開始から驚くほど多くのお申込みがありました。

ラスト
はじめに、参加者の皆さんと一緒に展覧会を鑑賞しました。本展覧会を担当している三谷学芸員から、安野光雅さんや作品についての紹介、つみきのそのさんのご挨拶とつづき、ふしぎのせかいからやってきた、トンガリ帽子のお兄さんも登場しました。

トンガリ帽子のお兄さん
今回のワークショップは、3歳以上の子どもから参加が可能だったこともあり、ご家族そろっての参加がほとんどでした。安野さんの絵本には、子どもが夢中になる魔法があるようで…、お父さんやお母さんが先に進もうとしても、なかなか絵の前から離れない子どもの姿を、何度も目にしました。

鑑賞中
展覧会の雰囲気を少し味わったところで、いよいよ実技室でワークショップのはじまりです。そのさん自前の『あいうえおの本』で読み聞かせが始まり、どんどん、そのさんワールドに引き込まれていきます。

そのさん読み聞かせ
最初の遊びは「つみきdeふしぎなドミノ」から始まりました。参加者の皆さんが、実技室をぐるっと囲んで座った状態で、自分の目の前にあるつみきを、隣の人とつながるよにうに並べていきます。次々に並べていくと、あっという間に大きなドミノが出来上がりました。

ドミノ並べ中
ドミノができた

じゃんけんで一番になった子どもが、そーっと、ドキドキしながら先頭のドミノを倒すと…可愛らしい木の響きとともに無垢のつみきが倒れていきます。固唾をのんで見守る全員の前を通って、最後のしかけに到着!歓声が上がりました。

ドミノ倒し中

次の遊びは「つみきのなかに入ってみよう」でした。誰でも、つみきでお城を作ったりしたことはあると思いますが、自分が中に入れるくらいのものを作る機会は、なかなかありません。最初は、円の形につみきを並べるところからスタートしました。

つみきドーム1
その後はひたすら、一定の規則で、子どもたちにつみきを積んでもらいます。そのさんは、子どもが積んだつみきを、工事現場のマシーンのように、ぐるぐる回りながら整えていきます。

つみきドーム2
つみきドーム3
あれよあれよという間に、つみきは子供の身長を超え、今度は大人が高いところにつみきを積み上げました。

つみきドーム4

出来上がったつみきドームには、そのさんの巧妙なテクニックで入口の穴があけられました。

つみきドーム入口づくり
つみきドームに、こんなに大きな入口ができました!

ドーム入口ができたよ
こどもたちは、本当につみきの中に入れるとわかって大興奮!行列を作って、一組ずつ順番に、つみきのなかのふしぎな世界を堪能しました。

つみきドームの中
上からのぞいてみると、こんな感じです。つみきのお家はいかがですか?

ドームの中
つみきドームを堪能した後は、ドームをジェンガのように崩して遊びます。いつ崩れるかな。ドキドキ…

ドーム崩す
ガッシャン!!大きな音をたてて、あっという間につみきドームが崩れました。

がっしゃん
たくさんのつみきと、体をめいっぱい使って遊んだところで、今度は、そのさん劇場「つみきむかしばなし」のはじまりはじまり…。三角形のつみきを8個つなげた「はっこさん」を使って、皆さんご存知の昔話『桃太郎』が繰り広げられました。

はっこさん劇場1
おじいさんにおばあさん、桃から生まれた桃太郎、いぬ、さる、きじに鬼ヶ島の鬼まで!

2はっこさん劇場
8個のつみきが次々とかたちを変えて作られていく様子に、みんながひき込まれ、似てるの似てないのと子どものツッコミも合いの手を打ち、大爆笑の内にそのさん劇場は幕を閉じました。

全員集合
ワークショップ参加者の方たちにご協力いただいているアンケートには「とにかく楽しかった」「もっとつみき遊びを教えてほしい」といった声が多く見られました。皆さんが、我を忘れてつみきの世界に入り込むという経験に至ったのは、そのさんの人柄や話術の面白さももちろんですが、つみきそのものが持つ特性、多様性を受け入れ、誰もが楽しく、その世界に入りこんで堪能できるという懐の深さゆえかもしれません。子どもも大人も「ふしぎなせかい」に夢中になって見入ってしまう、安野さんが描く作品との共通点を感じずにいられませんでした。